エネルギーになる、ホルモンの材料になる、脂質の基本を知る。

エネルギーになる、ホルモンの材料になる、脂質の基本を知る。

目次
 脂質の機能
 脂質の消化、吸収、代謝
 脂質の摂取量
 過不足のリスク
 脂質が多く含まれる食品10品目


脂質は、脂肪酸とグリセリンが結合した高分子化合物です。1)
非常に多くの種類があり、中性脂肪などの単純脂質、リン脂質やリポたんぱく質などの複合脂質、脂肪酸やコレステロールなどを含むステロイドなどの誘導脂質に分けられます。
脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分類され、それぞれ特有の働きをもちます。1)

脂質の機能

エネルギー源になる

脂質は炭水化物、たんぱく質と並ぶエネルギー産生栄養素のひとつです。
1gあたり約9kcalとたんぱく質や糖質の約2倍のエネルギーをつくり出す、効率のよいエネルギー源で、長期間のエネルギー供給に適しています。

体の構成成分になる

脂質の一種であるコレステロールは、細胞膜を構成したり、体の機能を調整するさまざまなホルモンの材料になります。

脂溶性ビタミンの吸収を促進する

脂溶性ビタミンと呼ばれるビタミンAやビタミンEは、脂質と結びつくことで吸収力が上がり、体内で効率良く働きます。

不飽和脂肪酸は血中脂質のバランスを整える

植物油や魚の脂肪に多く含まれる不飽和脂肪酸は、血液中の中性脂肪やLDLコレステロールを下げる作用が期待できると言われています。

脂質の消化、吸収、代謝

脂質の消化は主に小腸で行われる

体内に取り入れた脂質は、胆汁と脂肪分解酵素により、小さな粒子に分解され、小腸の絨毛に吸収されます。
吸収された脂質はエネルギー源として利用され、一部はリン脂質としても変換されます。
また、体内で必要な量のコレステロールも吸収されます。

脂質の代謝にはビタミンB2が関わる

体内で脂質をエネルギーとして利用する際に、ビタミンB2が補酵素として働きます。
ビタミンB2は、レバーや肉類、魚、乳製品、納豆、卵などに多く含まれます。
ビタミンB2は脂質だけでなくほとんどの栄養素の代謝に関わっているため、意識して摂取する必要があります。

脂質の摂取量

日本人の食事摂取基準(2020年度版)では、成人で総脂質からの摂取エネルギーが総摂取エネルギーに占める割合の目標量を、20%以上30%未満としています。
栄養向上基準*では、食事摂取基準の目標量を参照し、基礎代謝量と身体活動レベルより算出した必要エネルギーの 20〜30%E を満たす脂質量、至適量としています。
ただし、飽和脂肪酸摂取量は基礎代謝量と身体活動レベルより算出した必要 エネルギーの7%E を超えない量とします。

*栄養向上基準とは、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」に加え、ユカシカドが独自に策定した「至適量」を用いた、より満たされた栄養状態を目指すための基準です。

過不足のリスク

過剰摂取は肥満や心血管疾患のリスクを高める

脂質の摂りすぎは、肥満や脂質異常症を引き起こします。
特に動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸を摂りすぎると、血液中のLDLコレステロールが増加し、循環器疾患のリスクを増加させると言われています。
また、動脈硬化をはじめとした血管疾患のリスクとなり、生活習慣病の原因になります。

足りないとエネルギー不足を起こす

脂質はエネルギー源となるだけでなく、さまざまな重要な役割があるため、不足すると不調が起こることがあります。
例えば以下のようなリスクがあると考えられています。

  • エネルギー不足になる
  • 脂溶性ビタミンの吸収不良を起こし、ビタミン欠乏につながる
  • 細胞膜が弱くなったり、ホルモンバランスが乱れたりする
  • n─6系脂肪酸と n─3系脂肪酸が欠乏すると、皮膚炎などを発症するおそれがある

脂質が多く含まれる食品10品目(100gあたり)

オリーブ油 100g
有塩バター 81g
マヨネーズ 74.7g
くるみ 68.8g
生クリーム 43g
豚ばら肉 脂身つき 35.4g
ミルクチョコレート 34.1g
クリームチーズ 33g
牛ばら肉 脂身つき 32.9g
さんま 25.6g

植物油は種類に関わらず、脂質が100%です。くるみやアーモンド、ごまなどの種実類や、生クリームやチーズなどの乳製品にも多く含まれます。肉は皮や脂身に多く、ソーセージのような加工肉も脂質の多い食品です。
それぞれ異なる種類の脂肪酸が含まれており、健康に及ぼす影響が異なるため、日常の食事の中でいろいろな食材をバランス良く食べるようにすることが大切です。


出典

  1. 吉田企世子(2016)「あたらしい栄養学」高橋書店 P.182,183
  2. 脂肪/脂質|e-ヘルスネット(厚生労働省)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-014.html(参照:2023-12-4)
  3. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
  4. 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」