
ミネラルは、生体を構成する主要な4元素(酸素、炭素、水素、窒素)以外のものの総称です。
単一の元素からなる栄養素で、無機質ともいいます。
体の構成成分になったり、体の機能を調整したりしますが、体内で合成できないため、食品として摂取する必要があります。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、13種類のミネラルの推奨量や目安量を示しており、1日の推奨量や目安量が約100mg以上のミネラルを「多量ミネラル」、100mg未満のものを「微量ミネラル」と分類しています。
多量ミネラル
ナトリウム
体内の水分バランスの調整や、神経と筋肉が正常に機能するのを助ける働きがあります。
過剰摂取は体のむくみの原因となるほか、高血圧、腎疾患などのリスクが高まります。
しょうゆやみそなどの調味料、梅干しやたらこなどに多く含まれ、摂りすぎに注意が必要です。
カリウム
ナトリウムと共に体内の水分バランスを調整したり、筋肉の働きを正常に保ったりします。
通常の食事で過剰や欠乏は少ないですが、日本人は食塩としてナトリウムを摂りすぎる傾向があるため、意識して摂取したいミネラルです。
野菜や果物に多く含まれますが、調理過程で損失されやすいため、生のまま摂取するか、汁ごと摂取できる料理がおすすめです。
カルシウム
人体にもっとも多く存在するミネラルで、骨や歯の主要な成分になるだけでなく、筋肉や神経の働きを正常に保ちます。
通常の食事で摂りすぎることは少ないですが、サプリメントを使用する場合は高カルシウム血症に注意が必要です。不足すると、骨や歯の形成に障害が起きます。
牛乳・チーズなど乳製品はカルシウムが豊富なうえ、吸収率が高い食品です。ビタミンDは、カルシウムの吸収や沈着をサポートするため一緒に摂取すると良いでしょう。
マグネシウム
骨や歯にカルシウムが行き渡るようにして骨の形成を助けたり、酵素反応やエネルギーの産生などに関わったりします。
余分なマグネシウムは汗や尿として排泄され、通常の食事では過剰症や欠乏症の心配はありません。
海藻やごま、ナッツ、玄米やライ麦などの精製されていない穀類に多く含まれます。
リン
カルシウムとともに骨や歯を作ったり、エネルギー代謝に関わったりします。
過剰摂取は起こりにくいですが、カルシウムの吸収を阻害し、骨粗鬆症のリスクが高くなります。
乳製品や肉、魚などたんぱく質が豊富な食品に多く含まれ、不足することはほとんどありません。食品添加物にも使用されるため、加工食品を多く摂る人は過剰摂取に注意が必要です。
微量ミネラル
鉄
赤血球の成分であるヘモグロビンを構成し、血液の成分となります。
吸収率が低いため、通常の食事では過剰のリスクはありません。サプリメントなどを過剰に摂りすぎると、胃腸症状が起こります。月経・妊娠・授乳期の女性は不足しやすく、貧血により疲労、めまいなどが起きます。
鉄はレバーや赤身の肉などに多く含まれます。植物性食品に含まれる非ヘム鉄は、ビタミンCと組み合わせることで吸収率が上がります。
亜鉛
味覚の維持や、代謝に関わる栄養素です。欠乏すると味蕾にある細胞の新陳代謝が悪くなり、味覚障害や成長障害が起こります。牡蠣やレバー、肉類などの動物性食品に多く含まれています。植物性食品に偏らず、通常の食事をとっていれば不足する心配はありません。
銅
鉄の働きをサポートしたり、抗酸化作用のある酵素を作ります。通常の食事では、過剰や欠乏のリスクは少ない栄養素です。
様々な食品に含まれますが、レバーや魚介類に特に多く含まれます。特に意識しなくても不足や摂りすぎの心配は基本的にありません。
マンガン
酵素を構成したり、三大栄養素やカルシウムの代謝に関わったりします。
通常の食事で過剰症や欠乏症の心配はほとんどありません。
野菜や大豆製品などの植物性食品に多く含まれ、バランスの良い食生活を心がけていれば不足しにくいです。
ヨウ素
甲状腺ホルモンを構成し、代謝を高めます。
通常の食事では過剰摂取の可能性は低いですが、過剰になると甲状腺肥大や浮腫が生じます。不足もしにくいですが、欠乏すると過剰症と同様、甲状腺に問題が起こります。
海水中に多く存在するため、海藻類や魚介類に豊富です。海苔や昆布などの日本の海産物を食べていれば不足することはありません。
セレン
酵素の成分になり、抗酸化機能に関わります。
通常の食事では過剰症や欠乏症の心配は少ないですが、必須ミネラルの中では毒性が強いため、サプリなどを使用する場合は注意が必要です。
セレンは魚介類、レバーなどの肉類に多く含まれ、通常は不足しません。
クロム
インスリンの働きを助け、糖の代謝に関わるミネラルです。
吸収率が低く、余分なクロムは尿として排出されるため、通常の食事で過剰症は起こりにくいです。
あらゆる食品に含まれているため、通常の食事をしていれば不足することはありません。
モリブデン
酵素や補酵素を構成して様々な働きをしていると考えられています。
納豆、枝豆などの豆類や、レバー、穀類や野菜など幅広い食品に含まれ、通常の食生活で不足や摂りすぎの心配はありません。
ミネラルは互いに複雑に作用しあい、吸収や働きに影響を与えるため、過不足なく摂るが大切です。適量の幅が狭く、過剰症や欠乏症を起こしやすいものもあるため、バランスの良い食事を心がけ、サプリメントを使用する場合は過剰摂取にも注意しましょう。
参考文献
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」