目次
リンの機能
リンの消化、吸収、代謝
リンの摂取量
過不足のリスク
リンが多く含まれる食品10品目
原子番号15の窒素族元素です。
英語名ではphosphorusといいます。
成人体重の約1%に相当する650g程度が存在し、その85%が骨組織に含まれています。
加工食品に多く含まれ、現代人は過剰摂取の傾向がある栄養素です。
リンの機能
カルシウムとともに骨や歯を作る
カルシウムと結合して「ハイドロキシアパタイト」という形で存在し、骨格を形成します。
これによって骨を硬く保つ働きをします。
エネルギー代謝に関わる
ATP(アデノシン三リン酸)といった高エネルギーリン酸化合物の構成成分になります。
高エネルギーリン酸化合物はエネルギー代謝に関係する酵素やエネルギーを蓄える働きをしています。
ここから、脂質と炭水化物の代謝を助けるという効果が得られるといえます。
細胞膜や核酸を構成する
リン脂質として細胞膜を構成したり、DNA・RNA(核酸)を構成したりと、全ての細胞に含まれています。
リンの消化・吸収・代謝
消化管で吸収され、吸収率は60~70%ほど
食品中のリンはたんぱく質、脂質、糖質などと結合した有機リン化合物として存在します。
腸管内での消化によってリン単体となり、消化管で吸収されていきます。
成人の吸収率は60~70%程度です。
リンの摂取量
日本人の食事摂取基準(2020年度版)では、成人の男女で、800~1,000mg/日摂取が目安量とされています。
栄養向上基準*では、2022年5月時点の米国の食事摂取基準で定められている推奨量を日本人の体格で補正するために0.87を乗じ、610 mg/日を至適量としています。
*栄養向上基準とは、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」に加え、ユカシカドが独自に策定した「至適量」を用いた、より満たされた栄養状態を目指すための基準です。
過不足のリスク
過剰摂取は骨や副甲状腺機能に異常が起きる
リンの過剰摂取はカルシウムの吸収を阻害します。
そのため、骨粗鬆症や、骨が脆弱で曲がりやすくなる骨軟化症などのリスクが上昇します。
また、副甲状腺機能の異常により副甲状腺ホルモンが過剰になります。
副甲状腺ホルモンが増えすぎると腎不全や腎臓結石、筋力低下が引き起こされる場合があります。
通常の食生活で不足の心配はない
幅広く食品に含まれているため、通常の食事ができていれば欠乏症になることはありません。
病気や薬などによって血液中のリンが不足すると、食欲不振や体重減少、くる病、骨軟化症、貧血などが症状として現れます。
リンが多く含まれる食品10品目
牛乳、ヨーグルト、チーズなど乳製品、納豆や豆腐等の大豆類、肉や魚など、たんぱく質が豊富な食品に多く含まれています。
食品添加物にもよく使用されることから、ほとんどの加工食品に入っています。
加工食品に含まれるリンの吸収率は魚や肉に含まれるリンの吸収率よりも高いため、外食やテイクアウトなどを利用する人は過剰摂取している可能性があります。
ナトリウムと同様、不足よりも過剰に気を付けたい栄養素です。
参考文献
厚生労働省「国民健康・栄養調査(平成29年)」
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
文部科学省(2015)「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
岩堀修明(2016)「解剖生理学テキスト(第4版)」文光堂
上西一弘(2016)「栄養素の通になる」女子栄養大学出版部
奥恒行、柴田克己(2017)「基礎栄養学(改定第5版)」南江堂
田知陽一(2018)「栄養科学イラストレイテッド基礎栄養学第3版」羊土社
田中明、宮坂京子、藤岡吉夫(2015)「栄養科学イラストレイテッド臨床医学 疾病の成り立ち改訂第2版」羊土社