酵素の成分となり、抗酸化機能に関わる微量ミネラル、セレンの基本を知る。

酵素の成分となり、抗酸化機能に関わる微量ミネラル、セレンの基本を知る。

目次
 セレンの機能
 セレンの消化、吸収、代謝
 セレンの摂取量
 過不足のリスク
 セレンが多く含まれる食品10品目


原子番号34の第16族元素の一つです。
食品中ではたんぱく質と結合しており、成人の体内に約13mgが存在します。

セレンの機能

酵素の成分となり、抗酸化機能に関わる

グルタチオンペルオキシダーゼという、強い抗酸化作用を持つ酵素の構成成分です。
ビタミンCを再生する酵素や、甲状腺ホルモンの代謝に関わる酵素の構成成分でもあります。

セレンの消化・吸収・代謝

吸収率は90%程度

食事中ではたんぱく質と結合し、セレンアミノ酸として存在しています。
摂取されたセレンの約90%は吸収されると考えられます。
セレンがどのように吸収・利用されているかは詳しく分かっていません。
体内のセレン濃度調節は尿中排泄で濃度調節されていると考えられています。

セレンの摂取量

セレンの食事摂取基準


日本人の食事摂取基準(2020年度版)では、成人の男女で、25〜30μg/日摂取が推奨量とされています。
栄養向上基準*では、成人の男女で、50〜250 µg/日が至適量とされています。

上限量が定められており、推奨量の約13倍程度とされています。

*栄養向上基準とは、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」に加え、ユカシカドが独自に策定した「至適量」を用いた、より満たされた栄養状態を目指すための基準です。


過不足のリスク

通常の食事で過剰症の心配はない

通常の食事で過剰摂取になる可能性は極めて低いですが、サプリなどの健康食品の利用等で過剰が起きる場合があります。
脱毛や爪の脆弱化、胃腸障害、呼吸不全、神経障害、心筋梗塞、腎不全などが引き起こされることがあります。
必須ミネラルの中では毒性が強いため、サプリなどを使用する場合は耐容上限量に気を付けて摂取しましょう。

日本では欠乏症が起きにくい

セレンは魚介類に豊富なほか、土に含まれます。
そのため、野菜や果物などの植物性食品及び、植物性食品を飼料として摂取した肉類は、使われた飼料の育った土地のセレン濃度に影響を受けます。
日本では魚介類の摂取が多いことに加え、土壌にはセレンが適度に含まれています。
そのため、通常の食事ができていれば不足することはまれで、欠乏症の報告はありません。
中国の北東部は土壌中のセレン濃度が低く、克山(こくさん、ケシャン)病の報告があります。
克山病は心筋症を主とした病気です。

セレンが多く含まれる食品

魚介類に多く含まれます。
日本では穀類からのセレン摂取が多いと考えられています。
小麦粉は輸入が多いですが、同じ小麦粉でも産地によってセレンの量が大きく異なる可能性があります。
例えば、アメリカの土壌にはセレンが適度に含まれる一方で、オーストラリアは少なめだといわれています。
いずれにせよ、通常の食事を楽しめていれば不足や過剰の心配はありませんので、あまり気にしなくて良いでしょう。

セレンを多く含む食材10品目


参考文献

厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
文部科学省(2015)「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
上西一弘(2016)「栄養素の通になる」女子栄養大学出版部
奥恒行、柴田克己(2017)「基礎栄養学(改定第5版)」南江堂
川上浩(2018)「ヒトの基礎生化学」アイ・ケイコーポレーション
田知陽一(2018)「栄養科学イラストレイテッド基礎栄養学第3版」羊土社