炭水化物の代謝を助ける、ビタミンB1の基本を知る。

炭水化物の代謝を助ける、ビタミンB1の基本を知る。

目次

 ビタミンB1の機能
 ビタミンB1の消化、吸収、代謝
 ビタミンB1の摂取量
 過不足のリスク
 ビタミンB1が多く含まれる食品10品目


ビタミンB群の1つで、化学名はチアミン。
糖の代謝や分岐鎖アミノ酸(BCAA)の代謝に関与しています。(2
糖質の摂取が多い日本人は不足しやすいため、意識的に摂ることがすすめられている栄養素です。(1

ビタミンB1の機能 (1(2

糖質の代謝をサポートする

糖質や分岐鎖アミノ酸が代謝される時に不可欠な補酵素です。
その代謝の過程で作られる乳酸の処理にも関わります。

神経機能を維持する

中枢神経や手足の末梢神経の働きは、脳によってコントロールされており、脳は大量のエネルギーを必要とします。
ビタミンB1は糖質からのエネルギー産生を助けることで、脳・神経の働きを正常に保つ役割を果たします。

ビタミンB1の消化、吸収、代謝 (3

食べ物として調理されたビタミンB1はチアミンジリン酸という形で存在しています。
消化管内でチアミンに変換された後、小腸で吸収されて活性型になります。

ビタミンB1の摂取量 (3

ビタミンB1の食事摂取基準
日本人の食事摂取基準(2020年度版)では、成人の男女で0.9〜1.4mg/日摂取が目安とされています。
またVITANOTEで採用している栄養向上基準*では、成人の体内を飽和させるために必要な摂取量を「1.2 mg/1,000 kcalエネルギー」とし、推定エネルギー必要量を乗じて算出しています。

*栄養向上基準とは、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」に加え、ユカシカドが独自に策定した「至適量」を用いた、より満たされた栄養状態を目指すための基準です。


ビタミンB1は水溶性の栄養素で、必要以上に摂取しても排泄されやすいため、上限量の設定はありません。

過不足のリスク (1(3

過剰症の心配はない

通常の食事摂取で過剰摂取による健康障害が発現した報告はありません。
直接的にチアミン塩酸塩を慢性的に摂取した場合は頭痛、いらだち、不眠、側脈、脆弱化、接触皮膚炎、かゆみなどの症状が現れます。

欠乏により、神経炎や脳組織への障害が生じる

ビタミンB1が不足すると、エネルギー源となる糖質を摂取してもエネルギーに変換することができません。
慢性的なビタミンB1不足は神経に悪影響を及ぼします。
アルコールの多飲は、アルコール代謝亢進によるビタミンB1必要量の増加や消化管におけるビタミンB1の吸収障害を引き起こすため、ビタミンB1欠乏になりやすいとされています。

ビタミンB1が多く含まれる食品10品目 (1(5

豚肉、精製されていない穀物、豆、種実類に多く含まれています。
糠に豊富に含まれているため、糠漬けでも摂取することができます。
加熱調理により壊れやすい栄養素ですが、にんにくや玉ねぎ、にらなどの臭いの成分であるアリシンと一緒に摂取すると吸収効率が上がります。
また、生の貝類や甲殻類、淡水魚などにはアノイリナーゼというビタミンB1を分解する酵素が含まれています。
この酵素の活性は、加熱するとなくすことができます。

参考文献

  1. 上西一弘. 栄養素の通になる. 第4版, 女子栄養大学出版部, 2016, p.80-85.
  2. 奥恒行, 柴田克己. 基礎栄養学. 改訂第5版, 南江堂, 2015, p.176-177.
  3. 厚生労働省. 日本人の食事摂取基準2020年版.
  4. 田地陽一. 栄養科学イラストレイテッド 基礎栄養学. 第3版, 羊土社, 2018, p.127.
  5.  文部科学省. 日本食品標準成分表2020年版(八訂).