骨の形成を助け、日光浴で体内生成も可能なビタミンDの基本を知る。

骨の形成を助け、日光浴で体内生成も可能なビタミンDの基本を知る。

目次
 ビタミンDの機能
 ビタミンDの消化、吸収、代謝
 ビタミンDの摂取量
 過不足のリスク
 ビタミンDが多く含まれる食品10品目


ビタミンD2〜D7までの6種類が存在し、そのうちきのこ類に含まれるD2(エルゴカルシフェロール)と魚類に含まれるD3(コレカルシフェロール)が人間に必要なビタミンDとされています。
ビタミン類の中では珍しく、日光により体内での合成もできます。

ビタミンDの機能

骨や歯を強くしてくれる

ビタミンDはカルシウムとの関わりが強く、あらゆる面で骨や歯を丈夫にする手助けをしてくれます。
食事で摂取されたカルシウムの吸収を高める働きをもつ他に、カルシウムが骨や歯に沈着するのを助けてくれます。

筋肉や神経の正常な働きをサポートする

ビタミンDは血液や筋肉のカルシウム濃度を9~11mg/dLに保つ効果があります。
ビタミンDによって血液や筋肉に含まれるカルシウムの濃度が適切に調節されていると、筋肉の収縮や神経伝達が正常に行われるようになります。

ビタミンDの消化・吸収・代謝

食べ物のビタミンDは小腸で吸収される

食事で摂取されたビタミンDは小腸で吸収された後肝臓に取り込まれ、血液中に運ばれます。

太陽の光を浴びることで皮膚でも合成される

人の皮膚にはプロビタミンD3という物質が存在しています。
この物質が日光の紫外線によってプレビタミンD3(プレカルシフェロール)に変化し、さらに体温によって活性型のビタミンD3(カルシフェロール)へと合成されます。

ビタミンDの摂取量

ビタミンDの食事摂取基準

日本人の食事摂取基準(2020年度版)では、成人の男女で8.5μg/日摂取が目安とされています。
この値は日光に浴びることで生成されるビタミンDの産生を除いた値です。
1日に10~20分太陽の光に当たれば十分ですので、通勤・通学・買い物などで外出できていれば、敢えて日光浴をする時間をつくる必要はありません。
完璧すぎる日焼け対策は、ビタミンDの生成を阻害してしまいます。
少しは日光にあたる皮膚を残しておきましょう。
また外出できなかったり、日照の少ない地域や季節であったりする場合は、食事でのビタミンD摂取を増やす必要があります。

栄養向上基準*においては、血清中の25-OH-D濃度30 ng/mL以上を充足状態とし、20 µg/日のビタミンD3摂取で血清中の25OH-D濃度が30 ng/mLとなるとの報告より、成人男女の至適量を20 µg/日としています。

なお、過剰による健康障害が確認されているため、上限量が定められています。

*栄養向上基準とは、厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準」に加え、ユカシカドが独自に策定した「至適量」を用いた、より満たされた栄養状態を目指すための基準です。

過不足のリスク

サプリの摂りすぎで過剰症が起きる

肝油などのサプリを摂りすぎ、耐用上限量を超えた摂取が続くと、腸管がカルシウムを吸収しすぎて高カルシウム血症になることがあります。
高カルシウム血症になると、全身が疲れやすくなったり、食欲不振、嘔吐などが起きます。
悪化すると腎臓や動脈などにカルシウムが沈着し、腎臓障害や動脈硬化が起こります。
体内に十分なビタミンDがある場合、日光浴ではビタミンDが生成されなくなるため過剰症は起きません。
また、通常の食事で過剰症が起きる心配もあまりありません。

不足すると骨軟化症や骨粗鬆症のリスクが高まる

不足するとカルシウムが骨に沈着しにくくなり、成人では骨軟化症、乳幼児ではくる病という病気になります。
どちらも背中や脚など体中の骨が変形し、曲がってしまう病気です。
また、ビタミンDの不足は骨粗鬆症の原因にもなります。
閉経後の女性や高齢者は特に注意が必要です。
骨粗鬆症の予防には10~20μg/日の摂取が推奨されています。

ビタミンDが多く含まれる食品10品目

主に魚介類に含まれます。熱や酸素の影響を受けにくいため、調理による損失は少なめです。
魚介類には及びませんが、きのこ類にもビタミンDは含まれており、特に日光に干して乾燥させたきのこ類に多く存在します。
現在は干ししいたけなどを日光に当てずに乾燥させて作る場合が多いため、乾燥きのこのビタミンDの含量はさほど多くありません。
そのため、購入した乾燥きのこを自宅で日光にあてることで摂取効率を高められます。
なお、水に溶けにくいビタミンなので、水洗いしても損失の心配はあまりありません。

ビタミンDを多く含む食材の一覧


参考文献

厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」
骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会(2015)「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン 2015年版」ライフサイエンス出版
文部科学省(2015)「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」
上西一弘(2016)「栄養素の通になる」女子栄養大学出版部
田知陽一(2018)「栄養科学イラストレイテッド基礎栄養学第3版」羊土社